三合目の闇
自分の変化を感じる瞬間はふと突然に来る。
飛行機の進路が建物に重なっている映像、いつまでも出られない暗い森、泣き止まない赤ちゃん、繰り返し通る迷い道。
全てが暗い気持ちにするもので、まるでそれが現実を埋め尽くしているかのような絶望感が壁となり、わずかな光も感じられず、それを信じることもできず、苦しさを日常としながらただ生きることを考えていた。
来た道を振り返れば、今よりは明るい場所があり、わずかな望みを求める先が過去になり、また絶望する。
今、その時にある世界を受け止めるには、心がしぼみ過ぎていて、押しつぶされていて、もう息が吸えなくて。苦しい、も感じなくなって。
壁は白く、何もかもを消していき、そこにただ1人いることがあたりまえとなり、感覚は鈍くなり、希望は無意味と悟り、動くことをやめる。
体温、鼓動、髪の毛、目の色、肌の水分、爪の色、唇のかさかさ。
自分から出て、自分を忘れ、森の中をさまよい、空をみて方角を信じ、さまよい、また空をみて、さまよいさまよいさまよいさまよい。
そしてやっと出会えた先導者に背負われ、ようやく迷い道から抜け出し、生かされている存在であることを知り、安堵に目を閉じ、眠った。